防水工事の種類とその内容、特徴など
塩ビシート防水
塩ビシート防水工事とは、塩化ビニール樹脂で作られた防水シートを接着剤などで下地に貼り付ける工法です。
シートを接着剤で貼るだけなので施工性に優れており、複雑な形状や狭い場所でシート同士のジョイントがたくさん発生した場合でも、シート同士を熱風で溶かして一体化できます。
耐候性に優れ、単層防水のため工期も短く済みます。
長所
耐候性の良い塩化ビニール樹脂をベースに、耐久性を付与した防水シートを使用した工法です。紫外線・熱・オゾンに優れた耐久性を持ちます。
高い伸縮率と耐摩耗性を持ち、保護層なしで軽歩行が可能です。また鳥害も受けにくく、鳥のついばみによる穴開けも発生しにくいです。
シートは柔らかく曲げやすいので、施工しやすく、下地の撤去が必要ないので工期が短く、改修工事に最適です。
短所
塩化ビニールのシートを使用するので、シート同士の接合をしっかりする必要があり、下地が平らである必要があります。
また、塩化ビニールは元々硬い素材で、柔らかくするため「可塑剤」が添加されていますが、それが気化してしまうと、シートそのものが硬くなり、割れやすくなります。耐久年数は10~15年です。
長尺シート工法
長尺シート工法とは、長尺シート(防滑性ビニル床シート)と呼ばれる床材を直接床や階段に貼りつける工法です。
長尺シートは多層シート構造で、表面が凸凹の防滑エンボス状になっており、適度な柔軟性があります。耐久性・遮音性・防水性にすぐれ、見た目にも美しい仕上がりになります。
長所
多層構造で防水性に優れ、表面の絵柄の凸凹によって滑りにくいという特性から、屋外の雨が当る場所等に施工されています。
耐久性も高く、歩行の際に摩耗や傷が懸念されるマンションの廊下や階段にも適しています。また、遮音性の高さから、足音等が響きにくい等のメリットもあります。
短所
長尺シートに限らず、シート施工は下地や隙間の処理が大切です。
シート端部のシーリングを行わないと、水が侵入してしまうので、シーリングで隙間をしっかりと埋められる業者を選ぶ必要が重要です。
アスファルト防水
アスファルト防水とは、合成繊維不織布にアスファルトを含ませコーティングした、シート状の防水材を貼り重ねていく工法です。防水材を重ねることで、水密性に優れた防水層が構成されます。
熱工法は、アスファルトを高熱で溶融し、シートを複数枚交互に積層します。
トーチ工法は、シートの裏面と下地を、バーナーであぶり溶かしながら貼り付けます。
熱工法・トーチ工法それぞれに密着工法と絶縁工法があります。
常温工法は、液状のアスファルト材を用い、防水材を複数枚交互に積層して貼り合わせます。接着工法と絶縁工法があります。
いずれも、防水層が厚く連続しているため、施工のばらつきが少なく、信頼性の高い工法です。
長所
アスファルト防水の長所は、歴史が古く信頼性が高いところです。アスファルトを染み込ませるので、防水性能を確保しやすく、コストもそれほどかかりません。
防水層が厚く連続するので、水密性が高いのも特徴です。
保護モルタルで押さえれば耐久性もかなり高くなり、また他の工法よりも耐用年数が長いので、メンテナンスの回数も減少させることができます。
短所
高熱で溶かす必要があるのでその際危険があり、以前より改善されたものの工事中に臭いが発生します。
何層も重ねた上にアスファルトを流す手間もかかるので、工事の手間が多くなります。
上を歩く場合、露出したままにはいかず、上に保護モルタルを貼る必要があります。そのため屋根が重くなってしまうので、木造建築には向いていません。
また紫外線が当たると硬化して劣化していきます。それを防ぐために保護が必要になります。
ウレタン防水
ウレタン防水は、下地に塗るだけで防水層を形成する工法です。ポリイソシアネートを主成分とする主剤と、ポリオールを主成分とする硬化剤を合わせて塗膜します。下地の形状に馴染みやすく、水密性が高い連続皮膜が得られるのが特徴です。
一言で言うと、ウレタンは不定形材料のため、施工場所の形状が複雑でも、簡単かつ確実に施工できるのが特徴で、しかも軽量です。
施工場所に物があっても、別素材の旧防水層があっても、その上から施工できます。
材料を塗るだけなので、改修工事として簡単な工事であり、工期も短く済み、コストも全面改修に比べ半分以下で済みます。また撤去する廃材も出ないので、環境保全・産廃処理の観点からも優れています。
長所
液体のウレタンを塗膜して防水層を形成する工法なので、下地の形状に馴染みやすく、また簡単で短期間で終わり、さらに安価であるという長所があります。
シームレスな防水層ができるので、屋上やベランダなど、施工場所を問いません。さらに、既存の防水層があってもその上から塗ることができます。
短所
ウレタン防水は簡単に安価に防水層を塗膜できる工法のため、あまり短所はあまりありません。
しかしあえて言うなら、経年による劣化と、亀裂に弱いことが挙げられます。でも、これは上から重ね塗りすることによって解決出来ます。
シーリング工事
シーリング工事とは、外壁のボートとボートの継ぎ目や、サッシなどの窓枠と壁の隙間を、シーリング材を注入して埋めていく工事のことです。
シーリング材には、雨の侵入を防ぐ「防水性」はもちろんのこと、「伸縮性」もあるので、地震などの揺れから外壁を守る役割も担っています。
「打ち替え」と「打ち増し」
シーリング工事には、既存のシーリングを全て撤去したあとに、新しいシーリングを充填する「打ち替え工事」と、既存のシーリングの上から、新しいシーリングを足していく「打ち増し工事」の2つの方法があります。シーリングの状態によって最適な方法を選択していきます。
シーリングは劣化する
シーリングは、紫外線など経年劣化の影響で、およそ5年を過ぎたあたりから、ひび割れ・肉やせ・はく離といった劣化が始まります。
劣化がはじまると、シーリングの特徴である防水性と伸縮性が失われ、雨漏りや外壁のひび割れにつながってしまいます。
また、シーリングが劣化すると、劣化箇所から建物内部へ雨水が浸入して補修が必要になってくる場合もでてきます。